2023年1月7日(土)に、唐津市十人町の唐津天満宮で行われた祭りを見に行ってきました。「おんじゃおんじゃ」と呼ばれる祭りで、火祭り「鬼すべ」のひとつです。この祭りも2年間コロナの影響により中止になっており、3年ぶりの開催となりました。
「鬼すべ」とは、福岡の太宰府天満宮に起源がある神事で、毎年1月7日に厄除けと無病息災を祈願して行われます。“災いを運んでくるもの=鬼”として、火で鬼を追い払う火祭りの一種です。太宰府での「鬼すべ」は、986年(寛和2年)に菅原道真公の子孫である菅原輔正(すけまさ)が始めたとされ、日本三大火祭りのひとつにもなっています。
「おんじゃおんじゃ」が行われる唐津天満宮は、唐津藩初代藩主・寺沢広高が唐津城のある満島山に祀っていた神社で、1619年(元和5年)に、現在の唐津市十人町の地に移転したようです。「おんじゃおんじゃ」は江戸時代から伝わる神事で、大松明とともに、門松や注連縄などの正月飾りをお焚き上げし、1年の無病息災を祈ります。
さて、私自身は、唐津天満宮を訪れるのは今回が初めてでした。唐津神社近くの駐車場に車を止め、街中を散策しながら唐津天満宮に向かいます。静かな住宅街の中にあり、思っていたより小さめの神社でした。天満宮ということで御祭神は天神さま、菅原道真公です。境内のどこかに天神さまの使いである神牛がいたはずなのですが、見逃してしまいました。次回訪れた時にでも探してみようと思います。
祭りのスタートは18時、最初に『火取り式』が行われます。6本の松明を手にした火消し装束の消防団員の方々が、本殿で神主さんから御神火を授かります。この6本の松明を先頭に、大松明が町内を練り歩きます。
6本の松明を持つのは、地域の子どもたちで、その後から大松明が続きます。大松明は、直径1m、長さ10mの大きさで、30名で担いでいるのにかなり重そうでした。早鐘の音とともに「おんじゃおんじゃ」の掛け声をかけながら練り歩きます。祭りの通称ともなっているこの「おんじゃおんじゃ」の掛け声は、「鬼だ鬼だ」が訛ったものだそうで、松明の火で家々の鬼(災い)を追い払うという意味があるようです。時々休憩を入れながら、2時間弱かけて街中を練り歩き神社に戻ります。
神社に戻ってくると、参道入口で大松明に点火し、一気に参道を駆け上がって本殿へ向かいます。境内はかなりの人出でしたが、その中を一気に駆けて行き、本殿の周りを3周します。この頃には、大松明もかなり燃えていて、所々で燃えた縄が落ちてきたりしていました。
本殿を周った後は、正月飾りを積み上げた櫓の中に、大松明を突っ込みます。ここからがクライマックス、櫓の中に大松明を垂直に立てるのです。時間が掛かりすぎると大松明が燃え上がってしまいますし、時間との勝負もある中、バランスをうまく取りながら力を合わせて大松明を立ち上げます。垂直に立ち上がったら参拝客からは大きな拍手。すぐに大松明は燃え上がり、櫓の中のお焚き上げも始まりました。私もカメラ片手に、お焚き上げの火の粉と煙に当たって一年の無病息災を祈りました。昨年の秋から年の終わりにかけて体調を崩すこともありましたが、これで今年一年は何事もなく過ごせますように・・・。ちなみに、燃え残った松の枝は火除け等の御守りになるとのことでしたが、持って帰る手段がなかったので断念しました。(熱々なので軍手とかが必要そうでしたし・・・)
今回初めて「おんじゃおんじゃ」を見に行きましたが、その迫力と熱気に圧倒されました。「鬼すべ」などの火祭りは、今まで写真や映像で見たことはありましたが、現場だと炎の熱や匂いなどを実際に感じることができます。やはり体感することは大切ですね。
また、この「おんじゃおんじゃ」が地元に根付いた祭りであることもわかりました。正月飾りを持って地元の方々がご家族で来られていたりして、小さい子も多いように感じました。正月行事のひとつとしてきちんと受け継がれているようです。唐津くんちもありますし、祭りが好きな人が多く、地域に根付いている街なのでしょう。
その他の多くの祭りと同じように、「おんじゃおんじゃ」も3年ぶりの開催となりましたが、人出も多く、ようやくお正月の行事の風景が戻って来た感じです。SNSなどで見ると、太宰府天満宮や各地の天満宮の「鬼すべ」行事も盛り上がったようです。やはり、日本人の生活にとって季節ごとの祭りは欠かせないように思います。祭りがあることによって、季節を感じつつ1年を過ごすことができるのかもしれません。
[肥前見聞録] T.Kawamichi